執事的な同居人
過去



どれくらい時間が経ったのだろうか。




私はずっとその場から動けずにいた。




気づけば涙も止まっていて、ただただ颯太さんの部屋一点を見つめていたんだ。





最近になって、泣いた後は落ち着いて物事を考えられるという自分のそんな部分に気がついた。






あの人は、本当に彼女?




いや、違う、


颯太さんは恋愛が苦手だって言っていたもん。





そんな人が、彼女なんて作れる?







(カバン、返して貰わなきゃ…)






スクっと立ち上がれば、ずっと座っていたからか目眩がした。




倒れそうになるも、壁に手をついて、目を閉じる。






目を閉じれば、思い浮かぶ颯太さんの顔。






早く、好きだって事を伝えたい。



言われると迷惑かもしれないけれど、言わなきゃ前に進めない気がするの。



もし本当に気がないと言われたとしても、気がないならその気にさせてしまえばいい。



高校生でまだまだ子供な私が、社会人で大人な彼をその気にさせるなんて難しいはず。



だけど、何事もやってみないと分からないもの。




行動に移す前に諦めるのが1番ダメだ。




やらずに後悔よりも、やって後悔の方がいい。












(あの人は一体誰?)





颯太さんのことを、颯太くんと言っていた。




知り合いなのは確かだ。






どこで出会ったのか、


考えられるのは





夜の仕事である、ホストクラブ。





昨日の夜から帰ってきていないのだから、夜の仕事場で何かあったんじゃないかって。






(やっぱり、泣いた後は落ち着いて考えられる)






無駄に勘も鋭くなるらしい。

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