執事的な同居人
目線は合わせないでおこう。帽子を深く被り、隣を通り過ぎようとする。
その瞬間、ふわりと煙草の匂いがして
「なあ」
パシッとその人が私の腕を掴んできたのだ。
「ひゃっ!!」
突然のことに思わず声が出た。
な、なに…!!?
「この辺り、女の子が1人で歩かない方がいいよ」
「え、あっ…そ、そうですよね、」
「どこ行こうとしてんの?連れてってあげる」
「いや…だ、大丈夫です!もうそこなんで!!」
軽く腕を引っ張るも、何故か離してくれない。
親切な人だけど…なんだろう、
ちょっと、怖いかも。
「……あれ?キミさー…」
その人は一瞬怪訝な顔を見せて
「っ!か、返して下さい…!!」
私の帽子を取ったのだ。
取られたことにより顔が露わになる始末。
やばい!高校生だってバレる…!
「あっ、いたいた。カズ探したぞ~…って、あれ?」
顔が露わになった状態で
また1人誰かがやってきたかと思えば
「紀恵ちゃん、もう来たんだ?」
ニコリと微笑むその人は、私に裏口の場所を教えてくれた人。
「涼さん、この子と知り合いなんですか?」
" 涼さん "
その人のことを、私の帽子を持つ目の前の彼はそう呼んだ。
そしてこの人は" カズ "という名前らしい。