執事的な同居人
「涼さ~ん、ちょっといいっすか?」
「おう、なんだ?」
涼さんがいなくなると、シーンと静かになるこの空間。
(厨房………)
ってことは、
颯太さんが働いている場所、だよね?
想像していた感じとは違う感じにちょっと驚いた。もっと汚い感じなのかと。
(ふーん…)
颯太さんがいつも働いている場所だと思うと、徐々に興味が湧いてきちゃって
(……まだ営業時間前だし、いいよね?)
慌ただしい感じのないこの場所を回ってみたくなった。
綺麗なキッチンに沢山のお酒。
そしてズラリと並べられたワイングラスなどの食器類。
何もかもが高級な物に見える。
こっそりキッチンに立ってみれば、ふと目に入った物が1つ。
壁のような所に貼られた料理の種類。その中でも『パエリア』が私の目に飛び込んだ。
パエリアの写真と共に作り方が記載されてあるそれ。
(だからあの時、すぐに作れちゃったんだ…)
私が「パエリア食べたい!」って不意に言ったあの日。
颯太さんは手際良く一瞬で作り上げてしまった。
颯太さんってやっぱり凄いな。
なんでも出来るんだな。
そう思っていたけど、ここで作り方を知っていたからじゃん。