執事的な同居人
(どうしようどうしようどうしよう)
焦っているからかまともに考えられなくて、どうにか見つからないようにとその空間に背を向ける。
私の目の前には開かないドア。
ギュッと目を閉じていれば
「………何やってんの」
「っ、」
背中側に人の気配。
その呆れたような声はきっとカズさんで
「まだ出て来ちゃダメでしょ」
ゆっくりと後ろを向けば、私を隠すようにして立ってくれていた。
「か、カズさんっ……」
「シッ。黙ってて」
「っ…………」
カズさんは振り向かずに後ろのドアに手を伸ばすと
ガチャッと鉄が何かに当たる音がして
「ロックかかってたみたい。今開けたから早く中戻って。」
言われて、静かにそのドアを開ける。
(開いてる…!!!)
ホッと胸を撫で下ろし、お礼を言おうとしたけれど「黙ってて」と言われたことを思い出して
こっちを見ていない彼に対してペコリと頭を下げた。見えてないけどね。