執事的な同居人







(どうしようどうしようどうしよう)



焦っているからかまともに考えられなくて、どうにか見つからないようにとその空間に背を向ける。




私の目の前には開かないドア。


ギュッと目を閉じていれば





「………何やってんの」


「っ、」





背中側に人の気配。



その呆れたような声はきっとカズさんで





「まだ出て来ちゃダメでしょ」





ゆっくりと後ろを向けば、私を隠すようにして立ってくれていた。





「か、カズさんっ……」


「シッ。黙ってて」


「っ…………」





カズさんは振り向かずに後ろのドアに手を伸ばすと


ガチャッと鉄が何かに当たる音がして






「ロックかかってたみたい。今開けたから早く中戻って。」





言われて、静かにそのドアを開ける。





(開いてる…!!!)





ホッと胸を撫で下ろし、お礼を言おうとしたけれど「黙ってて」と言われたことを思い出して



こっちを見ていない彼に対してペコリと頭を下げた。見えてないけどね。


< 199 / 422 >

この作品をシェア

pagetop