執事的な同居人
「あれ?聞きたい事はそれだけ?颯太くんに伝えたい事とかあったら伝えといてあげるよ?」
「いえ……何もありません。…失礼します」
ペコリと頭を下げて個室を出ると
「っ………」
ドアの前で泣きそうになった。
家を出る事、教えてほしかった。
だったら、その前に想いを告げれたのに。
ここで泣いちゃ迷惑かけると思い、足早に裏口へと向かおうとした。
「待って。」
だけど、そんな私の腕を掴んできた人がいて
自然と足が止まる。
「妹が、ごめん」
「…………………」
なんで謝られているんだろう。
カズさんは何も悪くない。
ましてや麗華さんも悪くない。
一緒に住む事を決めたのは、紛れもなく颯太さんの気持ちも含まれているはず。
………誰も悪くないんだ。
「………これ、麗華には内緒だけど」
何も喋らない私に、カズさんは1枚のカードを手渡した。
なんのカード?
よく分からなくて「?」を浮かばせていれば
「それは麗華の家のカードキー。部屋番号は1603号室。………たぶんそこに颯太さんがいる。」
「っ! えっ…なんで私に……」
「麗華が嘘をついてる。それは確実に。
…あいつが嘘をつく時、耳を触る癖があるんだ。それは昔からね。大人になった今でも治ってない。」