執事的な同居人
「だとしても、勝手に入ったりしたら…」
「大丈夫。何かあれば俺が責任取るよ。」
そう言って肩をポンポンと軽く叩かれると、
「案内する。ついて来て」
私を手招きして裏口へと向かった。
「麗華さんを放置していていいんですか…?」
「うん。涼さんが上手いこと説明してくれてるはずだから。……でも、遅すぎると怪しまれるからちょっと急ぐね。」
小走りでその場所へと向かうカズさんの後を私も急ぐようにして追った。
途中、その場所の近くまで来ると
「あのマンションがそうだよ。」
指差しをして教えてくれたそのマンションはとても高い建物で、タワーマンションみたいだ。
……少し圧倒される。
「ここからは1人で行ける?」
「はいっ…大丈夫です、」
「ん。じゃあ、あいつが気づいたときめんどくさいから俺は戻るよ。」
ヒラリと手を振って背を向けたカズさん。
「カズさん!!ありがとうございます…!」
呼び止めて、そういえば
「………ううん、全然。俺も颯太さん戻って来てくれないと困るからね」
ふわりと優しい笑みを浮かべて、彼はまた同じ道を帰って行った。
その笑みは、やっぱり兄妹だけあってそっくりだ。
性格は真反対のように感じるけど…
(あそこに、颯太さんがいる)
やっと、会えるんだ。
そう思うと、落ち着いていた鼓動が動き始めて、
私はその場所へ足早に向かった。