執事的な同居人
「はぁ……」
自然と出た溜め息。
だから、接客はしたくないんだって。
ホストは女性を楽しませるのが仕事だ。
仕事の愚痴を聞いたり、相談に乗ったり、話し相手になるのも必須。
そんな俺たちに高額なお金を払ってくれているのだから、その額に見合うような接客が好まれる。
俺はその通りに接客をしているつもりだ。
大体の女性は満足した顔で帰ってくれるが、麗華さんのように、一部の女性だけが何かしら勘違いをする。
この人は私に好意があるんじゃないか、って。
……そう思わせるような事をする俺も悪いのかもしれない。
(………ドアノブぶっ壊すか。)
正直この空間に囚われている事に苛立ちを覚えていて、俺はこのドアノブを壊せそうな物はないかと見渡す。
荒れたことはしたくなかったが、言われた通りに大人しくしているつもりもない。
俺は完璧でもなければ、優しくもないんだよ。
何か硬い物。それを求めて探してみるが、俺の求めている物とは逆に柔らかい物しか無い。
万事休す。という言葉が頭に浮かんで
「ふー…」っと息を吐き、壁にもたれ掛かった。
チラリと時計を見れば、あっという間に夕方を過ぎていた。
俺が目を覚めたのは昼過ぎで、あれから約5時間は経っている。
(……アイツはいつ戻ってくるんだ)
ここのドアが開いた瞬間、外に出てやろう。
もうそれしか方法は無い。