執事的な同居人
口調
颯太さんに連れられて
慣れたようにタワーマンションから出る。
ギュッと握られている手が心地よくて
苦しい気持ちなんて一切ない。
颯太さんの後ろ姿を見つめれば、好きという感情が溢れ出た。……その背中に飛びつきたいくらいに。
(外だからそんなことしないけど)
何も言わずに歩みを進める彼に、私もついていく。
「ネクタイ…付けてないんだね」
いつもスーツ姿の颯太さんの首元には必ずネクタイが付けられていた。
だけど、今は無い。
「置いてきました。」
「えっ、いいの?付けないと落ち着かないんじゃ…」
「いいえ、全く。ネクタイ苦手なので寧ろ付けてない方が落ち着きます。」
「でも、私の前ではいつも付けてたよね?苦手なら無理して付けなくても…」
軽く振り向いた彼は
「また今度ちゃんと説明しますよ」
ニコリといつものように微笑んだ。
(……その笑顔好き)
私の顔を見て、優しく微笑んでくれる。
もう見れないと思っていたから、
また見れて凄く嬉しいや。