執事的な同居人
麗華さんは悲痛な面持ちでカバンから携帯を取り出し、それを颯太さんの手元へ。
颯太さんはそれを受け取ると
「では、もう用はないので。」
私の手を取りその場を後にする。
怒っていることは分かりやすいほどに感じた。
「おっ!颯太じゃん!!」
部屋を出れば、ちょうどその部屋に向かう途中だった涼さんに遭遇した。
「何があったのか詳しくは知らないけど、今ここにお前がいるってことは無事だったてことでいいんだな?」
そう言って、颯太さんを軽く抱きしめた。
「ああ、そうだな」
「いや~良かった良かった」
「涼。」
「ん?」
「お前はもう少しオーナーの自覚を持て。
それから二度と従業員を客に送らせるな。」
「お…おぉ、すまん……」
「言いたいことは他にも山ほどあるけど、今はそれだけにしとく。さっさと帰りたいし。
………それから、」
涼さんの肩を押して
「二度と接客はしない。」
そう言い捨てて、再び歩みを進めた。
イライラしているはずなのに
私の手を掴む力はとても優しい。
涼さんの隣を通り過ぎようとしたとき、
私にとってはお世話になった人だから、
「涼さんありがとうございました…!」
気まづそうな表情を浮かべる彼に軽く頭を下げて、そう言った。
その瞬間、握られている手にキュッと力が加わった気がした。