執事的な同居人
「前に教えたと思いますが、俺の苦手なことは服選びと恋愛です。
服は色合いや組み合わせが分からないから。
そして、
恋愛は自分の気持ちが分からないから。
これが本当に好きって事なのか、自分の感情がよく分からない。
…………だけど、今、
それが分かる気がします。」
ゆっくりと離されて、私は彼を見上げた。
目の前の彼はとても優しい顔をしていて
「あなたの事が愛おしくてたまらない。
………こんな感情初めてですよ。」
少し照れ臭そうに微笑んだ。
「うぅっ……」
嬉しいのに涙が止まらない。
颯太さんの顔をハッキリと見たいのに、涙のせいで視界がぼやけてよく見えない。
明日は目が腫れてそうだ。
「泣きすぎですよ」
ポンポンと背中を優しく叩いてくれる。
その優しさとその手のあたたかさに
再び涙が込み上げてきた。
「今は優しくしないで……」
「そうですか。分かりました。」
「えっ」
スクッと立ち上がった彼はスタスタとどこかに行ってしまった。
えっ? いや、まあ、優しくしないでって言ったのは私だけどさ……
思っていたよりも素直に受け入れたものだから、少し寂しい感じが残る。
(今のうちに泣き止まないと……)
目をゴシゴシと擦って涙を拭う。
本当に早く泣き止まないとな…
明日から学校なのに
目が腫れていたら恥ずかしいし。
落ち着かせようと「ふぅ…」と声を漏らせば
「紀恵さん」
呼ばれて、振り向く。
その瞬間
「っ!」
再び颯太さんに唇を奪われた。