執事的な同居人
「そろそろ帰りましょうか」
「うん!」
あ~、楽しかったなぁ。
一緒にお出掛けして、そのまま同じ家に帰る。寂しい気持ちなんて全くないや。
ルンルン気分で颯太さんの隣を歩いていると、前から歩いてきたカップルに自然と目線が向いた。
そのカップルはとても幸せそうに手を繋いで…
(…………手、繋ぎたいな)
私もそんな気持ちに。
チラリと颯太さんの手元に目線を下ろせば、すぐ隣にある手は空いているようで。
「…………………」
少し緊張しながらも
ゆっくりと
その手に手を伸ばす。
そして人差し指が軽く触れた────時、
「っ、えっ」
パシッ、と。
その手は払い除けるようにして、弾かれた。
タイミング……悪かった?
弾かれたことに驚きつつも、恐る恐る颯太さんの顔を見上げれば
「…………………」
颯太さんは無表情のまま、私を見下ろしていて。
「あっ……」
その顔は
きっと
ダメってことなんだ。
すぐにそう気がついた。
チクリ、と胸に痛みが走る。
拒絶された…ってことだよね?
「ご、ごめん……」
無理矢理笑顔を作って顔を背けた。
(………恥ずかしい)
まさか拒否られるなんて思ってもいなかったから…
楽しい気持ちが一気にどん底まで落とされたような感覚。
「…………紀恵さん」
「っ」
名前を呼ばれると、身体がビクッと反応した。
「…………………」
その反応に颯太さんは「ふぅ…」と軽く息を吐いて
「家に帰ったら、少し話をしましょう」
眉根を下げて、
少し困ったような表情で微笑んでいた。