執事的な同居人
「昼間…手を弾いてしまってすみません」
「ううん、もうそんなの気にしてない。颯太さんの言う通りだもん。……ちゃんと考えてくれてて嬉しい」
そう言えば、颯太さんはいつものように微笑んで
スリッ…と顔を擦り寄せた。
「外で触れ合うよりも、こうやって家の中で触れ合う方が好き…」
「どうしてですか?」
口角を上げてニヤッと笑う彼は
きっと私が言いたいことに気づいているはずなのに、知らないフリをする。
「だって外じゃ………キスできないもん」
コツンと額を颯太さんに合わせると
「俺も、」
後頭部に回された手によって引き寄せられ、
「キスしたかった」
少し長めのキスが落ちる。
「本当に…?」
「本当ですよ。
楽しそうに買い物をする紀恵さんも、
どっちにしようか迷っている時の紀恵さんも、
手を繋ぎたいって思ってくれた紀恵さんも
今日1日中ずっと可愛くて、その度に触れたいと思ってた。……気持ち悪いだろ?」
苦笑いを浮かべる彼だけど、
そんなの…気持ち悪いなんて思うはずないじゃん。
そう思ってくれてるなんて、私、愛されてる証拠だよ。
「……じゃあ、今、して?」
そっと颯太さんの頬に手を添える。
その綺麗な顔は少し熱を帯びていて───
「今日可愛いって思った分だけ、キスしてよ」
今日の私はなかなか積極的だと思う。
だってここは家の中なのだから……何も我慢しなくていいんでしょう?