執事的な同居人
***** 颯太side
「島崎、これ確認して」
「分かりました。」
昼休憩の少し前。
少しバタバタとした社内で俺はパソコンと向き合っている。
(今日はやけに忙しいな…)
残業コースか?これは。
まだ朝だというのに少しの疲れ。
「ふー…」と小さく息を吐けば
机の上に置いていた携帯から通知音が鳴り、仕事モードの俺はもちろんその通知も仕事の関係のものだと思って、手に取る。
画面に映るその名前は
《涼》
その1文字。
(電話……後で掛け直すか)
今はそれどころじゃない。
無視して、再びパソコンと向き合う。
「…………………」
けれど鳴り止まないその音。
「はぁ…」とため息をついて、席をあとにした。
廊下に出て「……もしもし?」と小さめの声で電話に出れば、
『おれおれ!』
「なんだよ…今仕事中なんだけど」
『ああ、そっか!仕事中か~悪い悪い』
「で、なに。俺今日休みだろ?」
『その予定だったんだけどさ~』
………嫌な予感。
『出勤してくんね?』
「接客はしないって言っただろ」
『ああ、違う違う!接客じゃなくて厨房。さっきカズから連絡があってさ、体調不良で休ませて欲しいって。だから代わりに出てくんね?』
「………無理って言ったら?」
『いいって言うまで永遠に電話かけ続ける』
「はぁ………」
……カズが体調不良、ね。
カズにはあの件でいろいろお世話になった。
紀恵さんもお礼が言いたい、そう言っていたから──
「分かった。」
そのお礼の代わりとして、出てもいいかと思った。
まあ、今日は早く帰る意味もないし。
『おお!颯太ならそう言ってくれると思った!じゃあいつもの時間でよろしくな~!』
プツッと電話を切る。
その瞬間、再び携帯から通知音が鳴り
《紀恵》
どうやら写真を送ってくれたみたいだ。
(無事に着いたみたいだな)
その写真は綺麗な海の写真と、友達だろう人と仲良く写っている笑顔の紀恵さん。
───自然と、顔がほころぶ。
チラリと時計を見れば昼休憩まであと少し。
「………よし、」
紀恵さんの笑顔を見ただけで気合いが入るとか、ほんとベタ惚れだな、俺。