執事的な同居人
その後はシフト通りの時間まで働き、
現在午前1時を過ぎた辺り。
携帯を開ければ1件の着信と2件のメッセージが届いていて、
もちろんそれは全て紀恵さんからで
『仕事中?』
『やっぱりなんでもない!おやすみ!』
とのメッセージが。
(電話、したかったんだろうな)
ふっ、と。自然と笑みがこぼれた。
(修学旅行中だというのに俺と喋りたかったのか)
そう思うと可愛いくて仕方がない。
友達といても俺の事を考えているんだなって。
そんな俺はきっと起きていないだろう紀恵さんにメッセージは返さず、携帯を閉じる。
(朝方に返そう)
通知音で起こしてしまうかもしれないから。
携帯をポケットにしまえば、手に持つ袋がガサッと揺れた。
それは薬などが入った袋で
俺は今、カズが住む家へとやってきた。
少し古いそのアパートは涼が昔住んでいた場所。どうやら今はカズが住んでいるらしい。
貸している、ということだ。
それを知ったのは今日の仕事終わり。
仕事中「カズ倒れてねぇかなー」ってずっと心配していた涼から聞いた。
一人暮らしで、しかも病院にも行っていないとなれば、心配にもなるだろ。
部屋の前に立ち
中にいるその人に連絡を入れれば、
「あ……颯太さん、」
少ししてマスクをつけたカズが出てきた。
涼が言っていた通り、いつもと声が違う。
「大丈夫か?薬買ってきたから」
「すみません、ありがとうございます…」
ケホッと咳き込むカズに
前もって連絡は入れておいた。
『やばそうなら仕事終わり何か買って行こうか』
いつもなら『大丈夫です。気を使っていただきありがとうございます。』と謙虚にくるはずが、
『やばいです。』
たったその1文。
カズがそう言うのだから相当なんだと思った。
まあ見た目からして、だいぶ熱があるな。