執事的な同居人
「俺が中学生の頃に親が離婚して
俺は母親に、麗華は父親に引き取られました。
元々俺は父さんの事が好きじゃなかったので、こうなって良かったと思ってます。
お前は俺の会社を継げ、と執拗い程に何度も言われていましたから。
会社を継ぐことよりも、他にやりたい事が山ほどあるし、ましてや好きじゃない人の会社に勤めるなんて考えられなかった。
だから俺は父さんを見捨てて母さんを選び、
麗華はその時幼かったにも関わらず気を使ったのか父さんの元へ。
……きっと父さんは俺を憎んでいると思います。父さんを最後に目にした時、とても冷たい目をしていましたから。」
まだ食べかけのゼリーをサイドテーブルに置く。これ以上は食べられないということなんだろう。
「それで、麗華さんとも疎遠に?」
「はい……ちょくちょく麗華から連絡はきてましたが、あの時気を使わせてしまった申し訳なさから返信しずらくて…」
その状態のまま、あの日久々に再会したというわけか。
「……大丈夫か?」
咳き込み始めたカズに薬を渡す。
「すみません、」と受け取ったカズは水と共にそれを流し込んで──…
ピンポーン
ちょうどその時、部屋中に来客音が鳴り響いた。
現在午前2時になる前。
(こんな時間に誰だ?)
「涼さん…ですかね」
「ああ、そうかもしれないな。俺が見てくるよ」
「……お願いします」
立てそうにないカズを置いて玄関へと向かう。
────その途中
ピンポン!ピンポン!ピンポーーン!!
煩いほどに何度も鳴り始めたそれに
自然と足が止まって
「嫌な予感しかしない……」
奥から聞こえてきたカズのその言葉に
俺も心の中で同意した。
こんな真夜中に何度も呼び鈴を鳴らすような迷惑極まりない行動、
……自己中なあの女が頭に浮かぶ。