執事的な同居人
嫉妬
朝起きると、颯太さんから返信がきていた。
『おはようございます。昨日は電話出れずにすみません。今日も仕事があるため出れそうにないので、また家に帰ってきたらお話をお聞かせ下さい。』
と、いつも通りの敬語で。
(今日も仕事、か……)
ちょっとでもいい。
少しだけ、声が聞きたい。
周りを見渡せば、
友達はみんなまだ寝ているみたいで
今日は土曜日。
只今午前7時になる前。
あのメッセージが届いていたのは
30分前だからー…
「…………………」
音を立てないよう、静かにベランダへと出る。
きっと颯太さんは今も起きてる。
そう思って、
颯太さんに電話をかけた。
プルルルル…
プルルルル…
プルルッ、
3コール目の途中で
『はい、もしもし。』
「っ!」
やっと聞けた颯太さんの声。
「も、しもしっ!颯太さん?」
嬉しくて嬉しくて
自然と口元が緩む私。
『え?あー…紀恵さんでしたか』
「名前見ずに出たの?」
『はい。ちょっと慌ただしくて』
そう言う彼からは、
どこか騒がしい音が聞こえてくる。
なんだろう…なんかこう、
バタバタと煩い感じ。
「今家にいないの?」
『ああ、その事なんですけどー…』
何かを言いかけたその時、
パリーン!!!
と、何かが割れたような音と共に
『きゃぁあ!!!溢れ出てる!!』
………女の人の声?
『あのバカっ…』
電話越しに聞こえるのは
女の人の叫び声と
颯太さんの呆れたような声。
「ねえ…颯太さん今どこに…」
『すみません紀恵さん。また事情を説明します』
「え、ちょっと、」
『では。』
ブツッ、ツーツー
「き、切られた…」
なに?何があったの?
女の人の声が聞こえて、
慌てるようにして切られた。
颯太さんは…誰か女の人と一緒にいる?
(私が修学旅行に行ってる間に…)
他の人と遊んでるってこと?
そう思うと心のどこかが熱くなって
「紀恵おはよ~…って、どうしたのその顔!めっちゃ怖いんだけど!!」
自分が今どんな顔をしていたかなんて分からないけど、起きてきた友達が言うには
私の顔は不機嫌そのものだったらしい。