執事的な同居人
─────────颯太side
「ちょっとなんで溢れるの!!」
あの女が
キッチンで何かをし始めたかと思えば
案の定大惨事になっていた。
「とりあえず火を止めろって!」
「消し方分からないわ!」
「たくっ…」
慌てる麗華さんはさておき
急いで火を消した。
さっき自分で火をつけていたくせに
なんで消し方を知らないんだ。
(目を離した隙にこれだからな…)
自然と溜め息が漏れる。
そんな俺に対して
麗華さんは俺の腕を掴み
「溜め息ついてる時もカッコいいね」
「………麗華さん」
「なぁに?」
「汚した部分はご自身で掃除して下さいよ」
「嫌よ。掃除なんてした事がないもの」
………イラッ。
分かりやすく眉根を寄せても
麗華さんは嬉しそうに笑うだけ。
この女…さぞかし家で甘やかされているな。
「うわぁ…また派手に汚したね……」
体調が少し良くなったらしいカズは
またキッチンの荒れ模様を見て苦笑い。
「お兄ちゃん!もう体調は大丈夫なの?今ね麗華がねカレー作ってあげようとしたの。でも全部溢れ出ちゃって」
「カレーかぁ…」
その顔は「(失敗してくれて良かった…)」って思っているのだろう。
体調が少し良くなっていたとしても、今はまだ濃ゆいものを食べる気になんてならないはずだ。
「麗華さん。お兄さんのために何かしてあげたい気持ちは分かりますが、いきなり経験の無いことをしては逆に迷惑をかけてしまいますよ。
あとは俺がやりますから、麗華さんはお兄さんのそばで看病しておいて下さい。」
そう言えば
麗華さんの顔がパァっと明るくなって
「お兄ちゃん!絵本読んであげる!」
「あー……じゃあお願いしようかな、」
「任せて!!最近私がハマってるこの不倫モノの絵本にするね!」
「そんな絵本あるんだね…」
思わずその会話にはクスリと笑ってしまった。
いや、どんな絵本だそれ。
普通に気になるわ。