執事的な同居人





─────────颯太side






「ちょっとなんで溢れるの!!」





あの女が
キッチンで何かをし始めたかと思えば
案の定大惨事になっていた。






「とりあえず火を止めろって!」


「消し方分からないわ!」


「たくっ…」






慌てる麗華さんはさておき
急いで火を消した。



さっき自分で火をつけていたくせに
なんで消し方を知らないんだ。





(目を離した隙にこれだからな…)





自然と溜め息が漏れる。



そんな俺に対して
麗華さんは俺の腕を掴み






「溜め息ついてる時もカッコいいね」


「………麗華さん」


「なぁに?」


「汚した部分はご自身で掃除して下さいよ」


「嫌よ。掃除なんてした事がないもの」






………イラッ。




分かりやすく眉根を寄せても
麗華さんは嬉しそうに笑うだけ。





この女…さぞかし家で甘やかされているな。






「うわぁ…また派手に汚したね……」





体調が少し良くなったらしいカズは
またキッチンの荒れ模様を見て苦笑い。






「お兄ちゃん!もう体調は大丈夫なの?今ね麗華がねカレー作ってあげようとしたの。でも全部溢れ出ちゃって」


「カレーかぁ…」






その顔は「(失敗してくれて良かった…)」って思っているのだろう。



体調が少し良くなっていたとしても、今はまだ濃ゆいものを食べる気になんてならないはずだ。






「麗華さん。お兄さんのために何かしてあげたい気持ちは分かりますが、いきなり経験の無いことをしては逆に迷惑をかけてしまいますよ。

あとは俺がやりますから、麗華さんはお兄さんのそばで看病しておいて下さい。」





そう言えば
麗華さんの顔がパァっと明るくなって





「お兄ちゃん!絵本読んであげる!」


「あー……じゃあお願いしようかな、」


「任せて!!最近私がハマってるこの不倫モノの絵本にするね!」


「そんな絵本あるんだね…」





思わずその会話にはクスリと笑ってしまった。



いや、どんな絵本だそれ。

普通に気になるわ。


< 259 / 422 >

この作品をシェア

pagetop