執事的な同居人





*****





修学旅行も終わり、

みんなと別れて最寄り駅に着いた。





夕方になっていることもあって
外は薄暗く夕日に照らされて少し赤い。







改札を出て1回大きな欠伸をすれば






「眠いんですか?」


「っ!? え、あ、颯太さん…」





ここにいるはずのない颯太さんが目の前にいる。





迎えに来てって約束してないのに……






「おかえりなさい。」


「……ただいま」





嬉しい。

やっと顔を見れた。



いつも通りに優しく微笑んでくれる、
そんな顔を。






………でも、



その表情は
私だけにするモノじゃない。





電話越しに聞こえた女の人にだってー…






「紀恵さん?」






気づけば顔を覗かれていて
その近さにプイッと顔を背けた。






「……なに?」


「どうかなさいましたか?元気がないようですが」


「つ、疲れてるの!あー早く家に帰りたい!」






わざとっぽく聞こえたかな?
割と大きな声で言っちゃった。




スタスタと歩くと


私の手に持つ荷物は
すんなりと颯太さんの手に渡り






「そうですね。早く家に帰りましょう。


今日は紀恵さんの好きなパエリアを作りましたから」




ニコリ。






あー…もう、ズルい。




その優しさも
その笑顔も


全部がズルい。





私は颯太さんに聞きたいことが山ほどあるのに
今はその事を忘れさせる。


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