執事的な同居人
意外。意外だった。
そんな受け止め方をするなんて。
大人からすれば、
子供の私が言っていることなんて
ただの文句にしか聞こえないと思うのに。
「あの日のことを説明出来てませんでしたね、すみません。誤解されているようなのでしっかり聞いてて下さいね。」
そう言う彼の通りにしっかり聞き耳を立てた。
あの日、カズさんが熱で寝込んでいたこと。
仕事終わりに看病に行ったこと。
そしてその家に麗華さんがやってきたこと。
悪気はないけど家の中を破壊するかのように家事をし始めた麗華さんをほっとけなくて朝まで家にいたこと。
「あのまま麗華さんを野放しにしていれば、カズの体調も悪化するばかりでしたから」
その事実を丁寧に教えてくれた。
「そうだったんだ……勝手に遊んでるなんて思い込んじゃってごめん」
「紀恵さんが謝る必要なんてありませんよ。
俺がすぐに説明していれば勘違いさせることもなかったのですが…
今日はもう紀恵さんに会える喜びからか、
すっかりその事を忘れていました。」
あぁもう……嬉しそうに笑っちゃってさ。
「ねぇ、今日は一緒に寝てもいい…?」
私のその言葉に
彼は1人分のスペースを空けて
「いいですよ。さぁおいで」
私をその中に引き込むように
颯太さんは私の腕を軽く引っ張った。
颯太さんの布団に
颯太さんの腕の中
体全身が颯太さんの匂いに包まれて
ムシャクシャが
ウトウトへと変化する。
こんなに眠たくなってしまうのは
きっとこの場所が安心して落ち着くからだ。
「颯太さん……」
「どうしました?」
「私ね…颯太さんのこと、好きすぎて苦しい…。なにもかも全部、独り占め、したい…なぁ……」
その後の事は記憶にない。
眠たすぎて寝ちゃったんだと思う。
「また可愛いことを……」
この時、颯太さんが苦しそうに顔を歪ませていたこととか
ふぅ…と溜め息混じりの吐息を出していたこととか
抱きしめる力がギュッと強まったことも
「……俺も、キミを独り占めしたいよ。」
全部、私の記憶にはない。