執事的な同居人
会社
朝。
隣にはもう颯太さんの姿はなかった。
時計を見れば既に9時を過ぎた頃。
(気づかなかった……)
きっと私を起こさないようにと、静かに準備をしたのだろう。
起きてすぐに
ヨダレを垂らしていたことには気づいて
慌てて拭った。
これを見られていたなんて超恥ずかしい…
ムクリと起き上がって周りを見渡す。
そういえば、
この部屋に入るのは初めてだっけ。
見慣れないこの空間が新鮮で
少しの間はずっと部屋中を眺めてた。
机の上に置かれた難しそうな書類だとか
ハンガーラックにかかっている服は全部スーツだとか
社会人だなーって思わされるような物ばかり。
(てか、本当にスーツしかないんだ)
再度知ったその事実にクスリと笑ってしまう。
今度一緒に買い物に行こう。
それでその時に颯太さんの服を選んであげてー…
リビングにはいつものように食卓に朝食の準備がされていて、恋人でありながらも母親のようで執事のよう。
「いただきます。」
誰もいない空間で
私は手を合わせて食べ進めた。
その間、脳内では
行ってらっしゃいって言えなかったなーとか
今日は何時に帰ってくるんだろうとか
もー仕事場には着いているのかな、とか。
考えることはやっぱり颯太さんのことばかりだ。
好きすぎてもはや気持ち悪いレベルじゃない?
そうは思っても、気持ちは自分でコントロール出来ないのだから仕方がないよね。
「………あれ?」
牛乳を飲もうと手を伸ばした時、
向かいの椅子の上に
何やら封筒のようなもの。
それは割と大きめで
「忘れ物?」
この席はいつも颯太さんが座っている席で
そんな席の上に茶色の封筒が1つ。
(今日必要な物とかじゃないよね?)
とりあえず颯太さんに連絡を入れるけど
こういう時に限って返信はなく
「…………………」
少しの間その封筒を見つめて
「…………よし。」
会社はお父さんの所と同じ。
場所は分かってる。
私は今日一日中することがなくて暇だから
「持って行ってあげよう!!!」