執事的な同居人
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私がこの会社に訪れたのは今回が初めてではなくて
中学生の頃に1度だけ
お父さんの忘れ物を届けに来たことがある。
そして2度目が今回であり、
(颯太さんはどこの人なんだろう…)
確か、部署、っていうのがあるんだよね?
お父さんは営業部で……颯太さんも営業部?
フロントの人に聞くのが手っ取り早いと思って
少し緊張しながらも建物の中へ。
とても広いその場所は、綺麗なお姉さんやスーツ姿の人達が忙しそうに歩いている。
(フロントは……)
キョロキョロと周りを見渡して
その場所を探す。
その瞬間、近くのエレベーターが開いて
中から沢山の人が流れ出るように出てきた。
ここにいたら邪魔だよね、
そう思って端に寄ると
「…………あっ。」
その中に1人、
見慣れているスーツ姿の人。
携帯を片耳にあてて話をしているその仕草も
「颯太さん!!」
見慣れていたからこそ、見つけられた。
ナイスタイミングだ!!!
突然のことに思わず名前を呼んでしまったけど、彼は今誰かと会話中で、
「ん?」
私の声に気がついたのは
颯太さんの隣にいた男の人。
「島崎~ あの子、知り合い?」
視線だけを私に向けた颯太さんは
ギョッとした顔を見せて凄く驚いている様子。
いや、まあ、そうなるよね。
仕事場に来ているなんておかしいし。
「こんにちは~」
「あ、こ、こんにちは」
「島崎と知り合い?」
「そうです…」
「へぇ~!どーゆー関係?」
その返答、凄く困る。
この人は…颯太さんの友達なのかな?
だったら私と颯太さんが同居してることも知ってる?
恋人同士ってことは言っちゃダメだと思うし…
「私は颯太さんのー…」
同居人です。
そう言う前に、
慌てて電話を切ったらしい颯太さんが
「石沢さんの娘さんだよ」
言葉を遮った。
「あ、そうなの!?営業部の石沢さんの!?」
「そーそー。」
「なるほど。お前石沢さんと仲良いもんな~」
「ソーソー。」
「(めんどくさそう)」
この感じからして、この人は私と颯太さんが同居している事を知らない。
隠している理由はなんとなく察しがつく。
「颯太さん、お父さんの所まで連れてってほしいの」
だったら私も合わせなきゃ。