執事的な同居人







「島崎今から外だろ?じゃあ俺が代わりに「いいよ。行こうか」






今度は男の人の言葉を遮って

颯太さんは私を手招きする。






「え、仕事放棄すんの?」


「しねーよ。まだ時間あるから」


「じゃあ俺もついてこっかな」


「久東、そういえば課長が呼んでたぞ。エントランスに荷物が届いてるからそれ運ぶの手伝えってさ」


「あ、まじ?」







久東さん、という男の人と目が合うと






「じゃーな!娘ちゃん!」


「あ、はい、さよならです」


「さよならは冷たくね~?永遠の別れみたいじゃん!」






ノリがなんだか

クラスにいる男子のような



久東さんは喋りやすい人

そういうイメージがついた。











この広い場所で2人っきりになると






「お父さんは2階にいらっしゃると思います。エレベーターは混雑するので階段から行った方がいいかと」






さっきまで普通に喋っていた口調が敬語へと変わる。




私にだけ敬語なんだ?……ふーん。







「違うの、颯太さんに忘れ物持ってきてあげたの」


「忘れ物、ですか?」


「うん。椅子の上にあったよ。
もしかしたら忘れ物かな~って思って」






「連絡も入れたんだよ?」そう言って



手に持つ封筒を手渡せば






「………ああ、それは紀恵さんのですよ」



「え?」


「1週間くらい前に大切な書類だとか言っていたじゃないですか。今日の朝、それが冷蔵庫の下から顔を覗かせていて拾ったんですよ」


「え。」






まさかのまさかすぎて「え。」しか言葉が出ない。





いや、え?

これ私のだったの?


それすらも記憶にないなんて。






「大切な書類はちゃんと自分の机の上に置いておきなさいって言っているでしょう。」


「うっ……」






なぜか会社にまで来て
颯太さんに怒られるという始末。



怒られに来たようなものじゃんか……


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