執事的な同居人
(お仕置きって一体何を……)
怒られるのかな、私。
想像のつかないそれを
1人になってからずっと考えていた。
………てゆーか、ちょっと触れるのもダメなんだ。
人差し指を掴んだだけなのにさ。
(颯太さんだって振り払おうとはしなかったくせにっ)
満更でもない感じだったし。
もし怒られたとしても、言い逃れが出来るようなことを必死に考える。
夕暮れになりつつある時間帯。
そんな私は今、
(………来ちゃった)
ホスト街に来ていた。
もちろん、颯太さんには内緒で。
言ったら絶対に行かせてもらえないだろうし。
興味本位でまた来てしまったわけではなくて、ちゃんとした理由があってここに来た。
少しざわめくこの場所にグッと帽子を深く被って
(確かここを曲がって、)
うろ覚えだけど、たぶんあってるであろうそこを曲がる。
路地に入って少し歩けば
壁にもたれ掛かりながら煙草を吸う人が1人。
「カズさん!」
そう。この人に用があって来たんだ。
またこの場所で煙草を吸っているんじゃないかと思って。その読みは当たってたみたい。
「?」
「あ、私です!私!」
誰だ?と言わんばかりの表情を浮かべるから、深めに被っていた帽子を取ると、どうやら気がついたみたい。
「……どうしたの?またここに来て」
「カズさんに用があって」
「俺に?」
ススッと彼の傍に寄り、
「あの、これお土産です」
「お土産…?」
「修学旅行に行ってきたので、それのお土産というか……この間のお礼というか…」
この間のお礼とは、もちろん麗華さんと颯太さんのあの出来事。
カズさんの助けがなかったら颯太さんに会えてなかったし……
「あー……
お礼も何も、悪いのはこっちだから。
……麗華がほんとごめん。あれでも一応悪気は無いと思うんだ。だとしても、麗華のしたことは人としてありえないことだけどね…」
クシャッと携帯灰皿に煙草を押し付ける。