執事的な同居人
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「げっ」
家に着けば、既に颯太さんの靴があって
「おかえりなさい。」
「た、ただいま……」
キッチンで夜ご飯を作る颯太さんの姿。
「何処に行っていたんです?」
「ちょ、ちょっとその辺をお散歩に…!」
やばい。やばすぎる。
バレてる?
バレてなさそう?
颯太さんの顔色を伺いながらも
恐る恐るソファーに座る。
「紀恵さん」
「は、はいっ!」
呼ばれて、思わず肩が跳ねた。
「ちょっとこちらに」
手招きする彼の元へ
怯えながらも近づく。
「な、なに……」
「目、閉じて下さい。」
「へ?」
「早く」
「は、はいっ」
ギュッと言われた通りに目を閉じる。
え、なに、なに?
雰囲気からして絶対キスではないし、
「口開けて」
「な、なんなの…」
なんだかちょっと
声が怒ってる感じ。
「っ………」
ちゃんと言われた通りに口を開けた。
この体制恥ずかしい…
目からの情報は閉じているから0で、
頬に何かが触れてピクリと反応すると
「………んっ、」
口に何かを入れられた。
「……に、苦いっ!」
噛めば噛むほど苦いそれにパッと目を開ける。
「苦いですか?」
「苦いっ…!てか、これピーマンでしょ!?」
私の大嫌いな食べ物である、ピーマン。
「まだ苦かったか…」なんて声が聞こえてくるけど
味も食感も嫌いで
吐き出してやろうと思っても
「あ、ダメですよ。」
「っ─────!」
口元を抑えられては、吐き出せず。
「なんでこんなことするのよ!」そう思いながらキッと颯太さんを睨む。
その視線に気がついたのか
「お仕置きだって言ったじゃないですか」
どうやら嫌いな食べ物を食べさせることが、外で接触してしまったことに対するお仕置きらしい。