執事的な同居人
「あ、そうそう!」
何かを思い出したらしいお母さんはパチンと手を叩いて
「今度学校で面談があるでしょう?
あれ、颯ちゃんに行ってもらおうと思って!」
「えっ」
「だって今傍にいるのは颯ちゃんでしょう?なら、成績の事とか知ってて貰うべきだと思うの。私が怒るよりも颯ちゃんに怒られた方が紀恵に響くだろうしね~」
「やっ、でも!颯太さん仕事あるし…!」
「いいですよ。」
「い、いつの間に!?」
急に颯太さんの声が聞こえたものだから
パッと振り向けば
いつの間にか帰って来てるし。
「あら本当~?助かるわぁ」
「え、ちょっ、」
「はい。ちょうど有給を使用しないといけなかったので」
バチッと颯太さんと目が合えば
「せんせーの話、しっかり聞かせてもらいます」
嗚呼…もう最悪だ…
最近成績が下がっているなんて
そんなの颯太さんに知られてしまえば
「紀恵さん……またここ間違えてます。覚える気ありますか?」
「うぅっ……」
「泣くのは今じゃなくても出来るでしょう?それよりも覚えなさい。」
スパルタ授業が恒例になってしまった。
前回のテストで赤点3つをGETしていた事実を先生が颯太さんに話したものだから、夜の仕事が無い日の晩御飯終わりはこうやって颯太さんのスパルタ授業を受けることになった。
まあ嫌じゃないんだけどさぁ…
「今日はこのくらいにしておきましょうか。」
頭がパンク寸前の私は机突っ伏していて
そんな姿を見ては
颯太さんは「はぁ…」と溜め息をつく。
「覚えることはまだ山ほどありますが、紀恵さんなら出来ますよ。次のテストまで頑張りましょう」
ふわりと頭を撫でてくれるのだけど、
私はもうそれだけじゃ足りなくて
「お風呂沸かしてきますね」
そう言って席を立つ颯太さんの服の袖を掴んだ。
「キス……したい」
「…………………」
あの日から1度もしてくれていないそれを求めても
「赤点免れるまではしませんよ。」
毎度その言葉で跳ね返される。