執事的な同居人
───────────颯太side
(……寝てる?)
お風呂から上がれば、机に突っ伏してスースーと眠る紀恵さんの姿が映る。
紀恵さんのお母さんが来たあの日、
帰り間際に
「紀恵の成績が下がる一方なら、同居ももう終わりね~」
なんて脅すように俺達に言ってきたのだから、紀恵さんには少し努力してもらわないといけない。
(あの人、勘が鋭いからな…)
俺と紀恵さんの関係に気づいてるみたいだ。
まあその事を利用して、紀恵さんの成績を上げるために俺を面談に行かせたのだろう。
成績についてはこの間の赤点が響いているみたいで、これ以上取り続けると進級は厳しいとのこと。
「…………………」
スースーと眠る彼女の隣に腰を下ろす。
約束通り、やっておくべき所までは終らせているみたいだ。
気持ち良さそうに眠る彼女を起こすつもりはない。
「……頑張ってくださいね」
俺は教えることしか出来ないのだから。
(あなたが努力してくれないとー…)
「同居、取り消されてしまいますよ」
起こさない程度に
ふわり、と
優しく頭を撫でた。
「んー…」
顔の向きを変えた紀恵さんは
俺のいる方に顔を向ける。
少し昔の面影のあるその表情に
自然と手が
その柔らかくて白い頬に移動して
「…………………」
チュッ、と。
軽く触れるだけのキスを額に1回。
もちろん起きない彼女を目の前にして、口にしたい気持ちをグッと堪えた。
「我慢出来てないのは俺の方だな…」
紀恵さんにあんな事を言っといて、今じゃそんなキミにキスをしてしまった。
口にするのは、どうにか堪えたが。
(………早く終わってくれ)
近い距離にいるから、余計に耐え難い。