執事的な同居人







「……どこで?」



「あれどこだっけなぁ~



覚えてねーけど、
なんかイケメンくんと2人で勉強してた」






脳裏に浮かぶのは


俺に突っかかってきたアイツ。






(………と、一緒に勉強ね)






壁に掛けられた調理器具に手を伸ばし、
勢い任せに取ってしまえば







「颯太さん!!!」






と、カズの大きな声が横から聞こえて






「あっ…ぶねぇ……」






安心したようにそう呟く涼がいる。






「…………悪い」



「いえ…大丈夫ですか?」







俺の傍にいるカズの手には、ワイングラス。





俺が荒々しく壁に掛かっているそれを取ってしまったからか、どうやら上に吊るされていたワイングラスが落ちてきたらしい。




まあ…落ちてきたのが1つだけで良かったと思う。







「颯太…今日どうしたんだ?すげー荒れてんじゃん」


「…………………」


「なんか顔こえーしさ」







自分が今どんな顔をしていたかなんて分からないけど、涼が言うには不機嫌そのものらしい。







「………なんでもねーよ。カズ、ありがと。」



「あ、はい…」







カズの手からワイングラスを受け取って
洗い場へと持って行く。








………紀恵さんはアイツと勉強している。だったら良い事じゃないか。






勉強しろと言ったのは俺。



なら、全く悪いことじゃない。

寧ろ褒めるべきだ。







なのに、どうもそんな気分になれない。







(あー……くっそ、)






余裕の無い自分に苛立ち。






嫉妬深いと言われても仕方が無いと思う。





たったそんな事でむしゃくしゃしてしまうのだから。


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