執事的な同居人






「ただいまっ…!!」





家に着いてすぐに大きな声でそう言う。



靴を脱ぎ捨ててリビングへ。






この時、


家の中に踏み入れた瞬間





聞こえてくる音が無かったこととか

とても静かだったこととか

人の気配を感じなかったこととか




全部気が付かなくて






「颯太さん…?」






リビングにきて、ようやく気がついた。





テレビの音も

料理の音も




「おかえりなさい」


優しく微笑みながらそう言ってくれる人がいない。





………この間のあの出来事のように。







「っ、」






ドクンッと心臓が嫌な音をたてた。





(ご飯は……)





いつもなら、既にご飯は用意されている。



例え夜の仕事があったとしても、冷蔵庫に用意してくれてるんだ。


レンジでチンしてから食べてくださいって。





だけど、それも、ない。



何も無い。







「っ…はぁっ、…」






クラッと目眩がした。




呼吸が乱れて苦しい。





また、颯太さんがいない。



その事実がトラウマのように感じている。






(颯太さんっ…今、どこ…っ)






震える手で携帯を持ち、


電話をかけるも


繋がらない。






これも、前と同じ。



電話をかけても繋がらなかった。






……てことは、



「っ、」


また何かあったんじゃないかって。

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