執事的な同居人
「はあ?なんだてめぇ。お前こそ邪魔なブフゥッ!!」
途端。目の前にいた気持ち悪い男が消えた。
頬にあった手も
服の中にあった手も
その感覚がなくなったかと思えば
「殺すぞ」
地面に倒れている男の胸ぐらを掴む
怒りでいっぱいのカズさんが目に映る。
男の頬はカズさんに一発殴られたせいで真っ赤になっていた。
「っ───何すんだよ!!」
「お前こそ何してんの?嫌がってるの分かんねーのか?分かんねーくらい酔ってるんだろ?
───だったら、分かるまで殴り続けてやるけど」
そう言ってまた一発男に拳を当てたカズさん。
その瞬間ギュッと目を閉じてしまったけど、薄らと開ければカズさんの右手が赤くなっている気がして
「カズさんっ!!!」
もう一度殴ろうとしていたカズさんのその手を掴み、後ろに引いた。
「もういいです!!
カズさん怪我しちゃう…!!」
「こんなの大した事ないよ。キミの方がこれ以上に痛い思いをしているんだから」
「あっ!カズさん…!!」
再び振り上げられたそれに、
どうにか止めようと
慌ててカズさんに抱きついた。
「お願いしますっ…もう…やめて下さいっ……」
それ以上、手を、痛めて欲しくない。
「……………………」
ピタリと動きが止まったカズさんは、お腹に回された私の腕をそっと離して立ち上がる。
「カズさんっ…!」
また殴るのかと思ったが、
「コイツ、どうしたい?」
「え…?」
「警察に連れてく?そーなると、キミも根掘り葉掘り聞かれると思うけど。どんなことされましたか?とか。」
「っ、」
想像するだけでも背筋がゾクゾクして気持ち悪いのに
またそれを思い出して伝えるなんて
「……もう二度と顔を見たくないです」
そう言えば、カズさんは目の前の男を軽く足で蹴って
「だってさ。聞いてた?
二度と見たくないんだってお前の顔。」
酷く怯える顔つきの男に
「さっさと失せろ」
とても冷酷な声でそう言った。