執事的な同居人
カズさんに連れられた場所は
あの店の裏口。
躊躇いもなく入って行くカズさんに連れられて私も中へ足を踏み入れば、
「紀恵ちゃん!?」
私の姿を見て、
中にいた涼さんが目を丸くさせた。
「え、どうした?なんでここに……って、おいカズ!!どうしたんだよその手!!」
涼さんの目が一瞬にしてカズさんの右手へ。
「まあ、ちょっと」
「もう喧嘩はしない約束だろ…」
「すみません」
「相手ちゃんと生きてるだろうな?」
「はい」
「ならいーわ…」
悪いのはカズさんじゃない。
悪いのは、
「ごめんなさいっ……」
私がこの場所(ホスト街)に来てしまったからだ。
ポツリとそう言えば、涼さんは私の顔を見てギョッとさせた。
ボロボロと涙が溢れているから。
「…………なにがあった?」
「………まあ、ちょっと」
「ちょっとじゃ分かんねーよ」
何かに勘づいたように涼さんは眉間にシワを寄せていた。どこか怒りのオーラのようなものも見える。
カズさんはチラリと私の顔を見ると
「………ここじゃあれなんで」
さっきの出来事を今ここで話せば
また私が嫌な気分になってしまうと思ったのか、カズさんは涼さんを連れて違う部屋へと行ってしまった。
その時、カズさんは泣きじゃくる私の頭をふわりと優しく撫でてくれた。