執事的な同居人







「兄妹、か…」





そんな私に対し、カズさんは自分の携帯画面を眺めながらポツリとそう呟いた。






「にしては、依存し合ってるよね」





その視線がゆらりと動いたかと思えば





「颯太さんとキミ、本当に兄妹?」





疑いの目が


私の瞳をしっかり捕らえて逃がさない。




その言葉に無意識にも目を見開いてしまった。




何も言わない私に


カズさんは私の顔を覗き込み





「……間違えてたらごめんね。ただ、兄妹にしてはお互いに依存し過ぎなんじゃないかと思って。それから……」







「キミが、"颯太さん"って呼ぶこと」





言われて、パッと口元を手で押さえた。





確かに、私、ずっと颯太さんって呼んでた。



兄妹の設定なんだから、お兄ちゃんって呼ばなきゃなのに…





「…………………」





その行動に、カズさんは私が答えを言わなくても理解出来たみたいで。





「やっぱり……」





ふぅ…と軽く息を吐いたカズさんにギュッと目を閉じた。きっと、怒られる。そう思って。





ずっと騙していたんだもん。


騙されていた方は、気分良くないはず。





「そうだったんだね」





けれど、カズさんは怒るどころか



とても優しく微笑んだのだ。





「怒らないんですか…?」


「怒る?なんで?」


「だって……ずっと騙していたんですよ…?」




「颯太さんとキミに嘘をつかせてしまったのは紛れもなく麗華のせいだよ。だから、怒る理由がない。」





緩く微笑むと、再び彼は携帯に視線をあてて





「………そろそろ行くね。今、颯太さんと顔を合わせばなんだか殴られそうな気がするし」


「殴っ!?しないですよそんなこと…!」





カズさんは私の命の恩人って言ってもいいくらいなのに…!颯太さんもそれは理解出来てるはずだし…





「いや……うん。颯太さんの、声が…ね。」


「声…ですか?」


「………………」





苦笑いを浮かべて






「一目見れば分かると思うよ」





「じゃあ」とヒラリと手を振って、カズさんは行ってしまった。





最後にもう一度「ありがとう」と言うべきだったのに、





(声…?電話越しに聞こえた颯太さんの声が変だったのかな?)





聞いてない私は分からなくて、


そして未だに私に対して連絡は無くて───。


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