執事的な同居人
一線
─────────颯太side
隣には、ぐっすりと眠る紀恵さんの姿がある。
その顔はどこか幸せそうで
「…………………」
その姿を横目に、起こさないようにとゆっくりベッドの端に寄り、足を下ろす。……どうやら嫌われてはないみたいでホッと安心した。
昨日の晩、俺は紀恵さんを抱いた。
それも、割と荒く。
欲望を抑え込めずに、紀恵さんの身体のことを考える余裕すらもなかった。
(立てるかな…)
今日はいつものように学校がある。
(……休ませるか?)
だが、学校に連絡しようにも、今はまだ朝の5時。学校には誰もいないだろうし連絡しようがない。
休ませたいのは山々だが、今俺は一応出張中であり、今から戻らなければならない。
もし今日が至って普通の日常だったのなら、朝紀恵さんが起きて来る前に学校に連絡を入れて確実休ませていただろう。
けれど、それは今日叶わないこと。
休むかどうかは紀恵さん自身に任すことにして、
(……着替えないと)
ベッドから立ち上がろうとすれば
クンッ、と。
服の袖を引っ張られた。
起こしてしまったのかと思って振り向けば、未だに紀恵さんはぐっすりと眠っている状態。
「そう…ちゃん」
彼女は寝言を言いながら俺の服の袖を掴んでいた。
(…………ああ、もう)
1度一線を超えてしまうと、もう抑えが効かない気がする。それが怖くて今までずっと我慢してきた。
「っ………」
抱きたい気持ちをグッと堪えて
眠る紀恵さんの額にキスをする。
これから先、ルールを守れる気がしない。