執事的な同居人
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「ニヤけてる」
「へっ?」
放課後。いつものようにファーストフード店で勉強していれば、カイは私の頬をペンでツンツンっとつついた。
「7回目」
「なにが…」
「石沢サンがニヤけるの」
「に、ニヤけてない!」
「反応するところが余計に怪しいよな~」
「っ」
じゃあどうしろと…
てかまたニヤけてたんだ私。しかも7回目って……無意識だったとしても相当キモイよ私。
「同居人さんっとなんかあったデショ」
「な、にもないし」
「動揺隠せてないよ?顔とか特に」
言われて、パッとノートで顔を隠すも
「あっ」
ヒョイッとそれを取り上げられてしまい、
「いつもはブラウスの第1ボタン外してるくせに、今日はキッチリ閉めて"何か"を隠してるみたいだ」
「うっ…」
「石沢サンって分かりやすいよね」
そう言うカイはやけに勘が鋭い。なんでそこまで分かるんだ。私は何も言ってないのに、私の反応や制服の着方だけで分かってしまうらしい。
「痕ってさ、なんでつけるか知ってる?」
「………私のモノってゆー印でしょ」
「そ。せいかーい」
カイの質問にちゃんと答える私はもう認めてるも当然。カイには隠せないと判断したから。
それから、カイの目がとても真剣だったから。
「きっと、俺に向けての痕かもね」
「カイに…?」
「俺とこうやってベンキョーしてるのバレてるんだよ」
パタン、と。
カイは手に持つ私のノートを閉じて
「俺、同居人さんに何されるから分かんねーし、今日で勉強会は終わりにしよっか」
「えっ」
「大丈夫大丈夫。石沢サンはもー赤点取るレベルじゃないし。」
「本当に?」
「ホントホント」
「(棒読みなのは気のせい?)」
そういえば昨日、颯太さん言ってた気がする。『男と一緒に勉強しているだとか、』って。隠していたつもりはないけど、どこでバレたんだろう…
「……うん、分かった。今までありがとね」
「いいって全然~ テストもその調子で頑張れよ」
スッと伸びてきた手が私の頭に触れる直前「おっと、」とカイは手を引っ込めた。
「あっぶな。つい頭撫でるところだった」
苦笑いを浮かべ
「同居人さんに見られたら殺されそー」
「……颯太さんそんなことしないよ」
「どーだか」
信じようとしないカイにムッとするも、カイはヘラりと笑うだけ。
「独占欲ほど怖いものはないからね」
なんだか経験のあるような言い方。
やっぱり、一緒に勉強することって良くないことだったんだ。
……そりゃそうだよね。私も、颯太さんが誰か他の女の人とこうやって過ごしてると思うと、
凄く嫌だ。