執事的な同居人
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「お茶でいいですか?」
「うん…」
リビングで、私はテーブルに。
颯太さんはキッチンにいる。
「どうぞ」
「ありがとう…」
目の前に置かれたのはさっき言っていた通りに温かいお茶。そして、彼は私と向き合うようにして正面に座った。
「…………………」
「…………………」
少し、無言の時間が過ぎた。
テーブルの上にあるのはお茶が入ったコップ2つと、テストの解答用紙。
不意に彼が手を伸ばしたかと思えば、その解答用紙を手に取っていた。
「丸が沢山ありますね」
「……うん」
ジッとその解答用紙を見つめる彼は
ふわりと柔らかい笑みを浮かべ
「よく頑張りましたね」
私がずっと欲しかった言葉を
ずっと見たかった笑顔で
「うんっ…」
やっと私の目をちゃんと見て言ってくれたんだ。
「この点数は簡単に取れるものじゃありませんよ」
私は颯太さんに褒められるのが好き。
優しく微笑んでくれて
優しい目をして
「……本当によく頑張ったね」
不意に見せる敬語じゃない口調が好き。
「だからっ…同居取り消されないよね…?」
「……、…そうですね」
その為にずっとずっと頑張ってきたんだもん。
「良かったぁ…」
脱力してテーブルに身体を突っ伏す。
これからも、颯太さんと暮らしていける。
その事実が本当に嬉しくて嬉しくて…
「颯太さん、これからもよろしくね」
満面の笑みを浮かべる私だけど、
「…………………」
彼は「うん」とは言わなかった。
ただただ切なげに
けれども優しい瞳で
「同居、解消しましょう」
私の想いとは全く別のことを、彼は口にした。