執事的な同居人




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それから毎朝学校まではお父さんが車で送ってくれる事になった。



帰りは電車になってしまうけど、実家から学校までの距離は電車で1時間半の距離。



その距離が嫌でもう少し近い距離がいいと駄々を捏ねた結果、実家よりも近い場所へと一人暮らしを始めたんだ。





帰りは真っ直ぐ家に帰って来いとお父さんに念押しをされて、そんな私は毎日をボーっと無気力に過ごしていた。





なんだかもう、何もやる気にならない。


朝起きて、学校に行き、家に帰る。そんな似たような日常をずっとループする。




颯太さんと同居していた頃は毎日が新しい日だった。


颯太さんと話すことだとか、一緒にご飯を食べるだとか、テレビを見て一緒に笑ったり、悪いことをすれば叱ってくれたり。





至って普通の日常が
私にとっては楽しくて仕方がなかった。




颯太さんと" 何かをする "ということ。



好きだからこそ、飽きることはなく、ずっと傍にいたいと思った。





なのに今は───…もう薄れてしまってる。









「今日の学校は楽しかったか?」


「………うん」





家族と囲む食卓はもちろん嫌いじゃない。


嫌いじゃないけど、どこか気分が乗らない。



どんな会話でも私は「うん」とか「そうだね」しか返せずにいて、お父さんとお母さんはよく顔を合わせていた。





お母さんは毎日私の好きなご飯を用意してくれたり、お父さんは何度も私に話しかける。




気を使わせてしまっていることには気づいているけど……顔は自然と俯いてしまう。





心にぽっかりと穴が空いたように




私はまだその穴を塞げずにいた。

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