執事的な同居人
────────紀恵side
「22時までだ」
朝、いきなりお父さんが私にむかってそう言った。
「え、なに急に…」
「22時までには帰ってきなさい。まあ…5分くらいなら過ぎても許してやろう」
「はぁ…?」
なんなんだ、ほんと。
そんなこと言われなくても22時まで遊んだことないし。
急に定められた22時までという門限。意味がわからないまま「行ってきます」と車を降りて学校へ向かう。
お父さんとは実家に連れ戻されたときよりかは話すようになった。ただ普通に日常的な会話だけ。
私が返答するとお父さんはいつも嬉しそうな顔をする。その顔を見ると今までの私の態度が申し訳なくなった。
でも、今日のような謎めいた会話には返答しずらい。
(ほんと…なんだったんだろう)
謎。ほんと謎。
朝からモヤモヤと変な気分で学校の門をくぐる。と、
「よっ」
「っ!びっくりしたぁ…」
そんな私に駆け寄って来たのは
朝から爽やかな笑みを浮かべるカイ。
コイツいつも突然出てくるから驚きのあまり心臓がキュッと止まりそうになる。
「いいよなぁ車で送ってくれるなんて。俺も朝の通勤ラッシュにはうんざりだわ」
どうやら車で送ってもらっているところを目撃されたらしい。
「私は過保護過ぎてうんざりだよ…」
「それだけ大事にされてるって事じゃん。良いこと良いこと」
まぁそうでもあるけどさ…
心配しなくても、あの日から颯太さんに会ってないんだから。
もう会いに行こうとも思ってない。
私は、私が出来ることをする。
少し時間をくださいって颯太さんがそう言っていたんだもん。なら私はその通りに待っていることが今私にできること。
……そう教えてくれたのはカズさんだった。
河川敷で再会したあの日、私は今の現状をぽつりぽつりと話してしまった。
まって。これ言って良かった…?
自然と話してしまった、私と颯太さんの関係。
普段なら隠していたことなのに、
『聞かせてよ、俺に。キミの心情を』
そう言われると、なんだか話したくなって。
私って流されやすいタイプ…?
「えっ。同居…してたんだ?」
そんな中、カズさんが1番驚いた様子で食いついたのはその部分だった。
「あの……出来れば内密に…」
「ああ、うん。言わないけど………そっか、だからか。」
カズさんは何かを思い出したかのようにそう呟いた。
「仕事終わり、お客さんが帰った後にスタッフみんなでよく呑んで帰るんだよ。始発を待ってる間にね。
颯太さんも確か電車組だと思うんだけど……
ある時から速攻家に帰るようになったんだ。
大体は終電で帰ったり、終電を逃したらタクシーで帰ったり。何がなんでも早く帰りたいんだなって伝わってくるくらい。
………それってきっと、家にキミがいるからなんだろうね。」
「家に…私がいるから?」
「うん。早くキミに会いたかったんじゃない?もしくは家に一人でいるキミが心配でなのか。どの理由なのかは分からないけど、キミが関わっていることは確かだよ。」
そんな事を言われると、より一層颯太さんを好きになってしまう。
大切にされていたという事実が
好きを、超える。