執事的な同居人
「っ……。わ、たし……もうどうしたらいいのか分からなくて……っ、これ以上苦しませたくないのに……でも颯太さんのそばに居たいんです。……離れたくない。」
矛盾、そして我儘だ。
自分でも分かる、今我儘ばかり言っていると。
今私が進んでいる道は本当に正しい道なのか。
このまま進み続けていいのか。
……この先に待つものは、幸福なのか。
颯太さんのあの表情を思い返すと自信がないんだ。ずっと歪んだ表情を見ることになるんじゃないかって。
それは望んでいない。
……だからこそ、怖かった。
「こんなの、私のワガママですよね……」
切り替えたはずの気分が再び重たくなるのを感じ、顔を俯かせていた私。
一瞬の静寂。
その中で
「キミがしたいようにすればいいんだよ。」
放たれた言葉。
俯かせていた顔をゆっくりと上げると
視線の先は、私の瞳を真っ直ぐ見つめるカズさんで。
「麗華のあの件も、キミが行動したからこそ颯太さんを助けられたんだ。キミはちゃんと正しい道を選んでる。」
「っ………」
「だから、自分がやるべき事に自信を持っていいんだよ」
徐々に霞んでいく視界。
潤む瞳に映るカズさんは
真剣な表情から
ふわり、と優しい笑みを浮かべて
「大丈夫。必ず良い方に流れるから」
私に光を与えてくれたんだ。
自分がやるべき事に自信を。
(今、私がやるべき事は……)
グッと目元に力を入れて、溢れそうになった涙を堪えた。
「っ────カズさん!!!!」
「わっ、」
勢いあまって顔を近づけると、カズさんは目を丸くさせていた。
「私!もう下は向きません!前だけを見ます!!」
目を大きく開けて決意という文字を示せば、
「……うん、転けないようにね」
「転けません!!!!」
カズさんはクスクスと笑い始める。
「俺も、逃げてばかりじゃダメな気がしてきた」
視線を私ではない何処かへ当てて
「俺も前だけを見ることにする」
私と同様、決意、という文字を目に浮かばせたのだ。