執事的な同居人





カズさんも私みたいに悩みがあったのかな?


その感じからすると解決したようにも感じるけど…






「あっ!手!!手はもう治りましたか!?」



ふとある事を思い出して、慌てるようにカズさんの右手に触れる。




私がそれを気にしているのはホスト街で見知らぬ男に襲われていた私を助けてくれたあの日のこと。


男に拳を振り落としていた彼に怪我を負わせてしまったから。



あの日からカズさんにずっと会えていなかったし…





「うん。フル完治」





その手は、怪我をする前のように綺麗な手をしていた。





「言っただろ?大した事ないって。俺、人より治るスピード早いから」


「そうなんですか……」








「だから、謝るのはもう無しね」




ちょうど言いかけていたその言葉。「ごめんなさい」。その言葉を声にする前にカズさんに遮られる。





「俺は、謝られるより感謝されたいよ」


「!!」





やっぱり麗華さんと兄妹なだけあって笑い方はそっくりで、兄妹揃って美しく整った顔。





「ッ……カズさん!ありがとうございました!!」





麗華さんがカズさんに執着する意味が分かるかも。こんなにも優しくてカッコいいお兄ちゃんこの世にいないもんね。






「どういたしまして。」





ふわりと柔らかい笑みを浮かべてくれたカズさんを見て、そう確信したんだ。








そしてその日。




私は風邪をひいている颯太さんへ何か出来ることはないかと思い、沢山のリンゴジュースやらを買い込んであの家のドアノブに引っ掛けた。





きっと気づいてくれるはず。


リンゴジュースには元気になる作用があるって颯太さん言ってたもんね。





もしそれが本当なら



彼の心も身体も

どうか元気一杯になりますようにって。






「あー、早く大人になりてぇー」





ハッとカイの声で我に返る。



呟くように言っていたそれは

どうやら私にむかって言った言葉ではなさそうだけど、






「うん。私も」





ずっとそう思ってる。

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