執事的な同居人
笑顔
その日の学校終わり。
いつものように門の所で友達に別れを告げて帰るつもりだったんだけど、
「紀恵!」
「ん?」
「今日みんなでカラオケ行こうよ!」
「最近紀恵元気なかったしさ?気分転換に!」
「そうだよ!!大きな声出してスッキリしよう!」
(カラオケ…あまり好きじゃないんだけどな、)
音痴な私にとってはその場所は恐ろしい場所でもある。
けれど、
(元気なかった、か)
その事実に今まで友達に気にかけてしまったことが申し訳なくなって
謎に門限というものも作られたことだし、試しに行ってみようと思った。
今の私はそれほど元気がないわけじゃないしね。
少し気は乗らないけど
行ってみようと思って
頷きかけた─────時。
「………う──んっ!?」
私の口は誰かの手によって塞がれる。
後ろから回されたであろうその手。
(だ、誰っ!!?)
タイミングといい、
突然の事にそりゃもう驚いて。
振り向こうとすれば
「紀恵さん」
動揺すらも忘れてしまう
その瞬間はやってくるのだ。
聞き慣れた声
呼び慣れた言い方
そして─────
「お迎えにあがりましたよ。」
見せてくれるその笑顔は
「そ…うたさ……っ」
前と変わらず優しい。