執事的な同居人






颯太さんはその事実に気づいていながらも、言葉を続ける。





「……こんな気持ちになれるのは、紀恵さんだけ。

楽しい毎日を過ごして欲しいと願ってしまうのも、紀恵さんだけ。


こんなに人を好きになったことも
ずっと大切にしたいと思ったことも
全部全部紀恵さんが初めてなんです。


だからこそ……接し方が分からない。

大切にしたいのに、してるつもりなのに、
あなたを…苦しめてしまった。

引かれてしまっても仕方がないことをしたというのに、あなたは俺から離れたくないと言ってくれた。

このまま俺のそばにいれば、傷つくのは紀恵さんの方だというのに…」





自分自身を責めるような言葉。





けれど、彼の表情は


とても穏やかな表情で────





「あなたの笑顔が見られるのなら、それ以上の幸せなんてありません。」


「っ……」





頬に触れるのは、颯太さんのあたたかい手。






「……紀恵さん」






自らの描く夢を








「俺は、あなたのそばにいたいっ…」








言葉と表情で、しっかりと伝わった。







迷いのない目。




これが颯太さんの" 決意 "した内容だと

そう分かる。


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