執事的な同居人
帰宅
颯太さんの気持ちを知ったあと、
少し海を眺めてお喋りをした。
夕日が沈みかけのこの場は
それによって赤く照らされて
帰る間際にもう一度されたキスで顔を赤くさせる私だけど、夕日のお陰でか、その表情は颯太さんにバレていないと思う。
気づかれていたら
「紀恵さん、顔真っ赤です」
なんて、また言われているだろうし。
仕方がないじゃんか。
颯太さんとのキスは未だに慣れないし、
私は颯太さんのことが大好きなのだから
触れられることも
微笑まれることも
全部にキュンキュンしちゃうんだもん。
(顔とか……イケメンすぎるし)
…私の好きな俳優さんよりもかっこいいと思う。
多分それは、好きな俳優さんに対する愛よりも颯太さんへの愛の方が大きいのだからそう思ってしまうのかもしれない。
「帰りましょうか」
私の手をとって、立ち上がらせる。
「え?」
「ん?なんですか?」
「いや……帰るって…」
どこに?
颯太さんは「駆け落ちしてくれるのでしょう?」って言っていたもん。
私達、今から駆け落ちするんだよね?
……もしかして、あの家に!?
分かりやすくパァーっと明るい顔になる私。
颯太さんはその反応を見逃さなかったみたいで
「ご両親が待っている家にですよ」
私に期待させないようにか
素早くその事を伝えられた。
「えっ……駆け落ち、しないの…?」
またしても手を引かれ
車の助手席へと入れられる。
「しませんよ。ちゃんとご両親の元へ返します」
「じゃあなんであの時……」
すごく期待してたのに…
海を見ながらお喋りしてる時だって、この後もずっと一緒にいられると思ってたから、時間なんて気にならなかったのに。
バタン、と。
運転席側のドアが閉まると
寂しさが突風のように襲った。
「駆け落ち出来るのなら、したいのは山々です」
彼がシートベルトを付けるから
渋々私も取り付ける。
「だったら……」
「ですが。現実はそうはいきません」
バッサリと言われてしまい、何も言えなくなる。