執事的な同居人






「じゃあ、さ!その日までに颯太さんの服買いに行こうよ!!遊園地なんてスーツじゃ動きにくいだろうし!」


「そうですね。あなたに選んでいただけるのなら安心です」


「任せて!きっと颯太さんはなんでも似合うから───」





遊園地も買い物も


この先のことを想像すればするほど楽しくて


終始ずっと笑顔で喋ってた。



嬉しそうにする私に
颯太さんも優しい目をして。









「そろそろ着きますね」




気づけば外の景色が見慣れた景色へと変わっていて、徐々に私の家が見えてくる。





その家の玄関前には、1人の人影が。






「ん? あれ……お父さん?」





なぜか、お父さんの姿は家の外にあって

キョロキョロと周りを見渡すようにして立っていた。


 



「まって颯太さん!!お父さんがいる…」


「いらっしゃいますね」





焦る私に対し、颯太さんは焦る様子ゼロ。



寧ろ家の近くに車を停めるものだから、お父さんも気づくわけで。





(なんで平常心!?バレると怒られるのに…!)





焦っているのは私だけ。



またしても颯太さんにエスコートされ
助手席のドアが開かれる。




お父さんは颯太さんの存在に気づいていながらも





「おかえり」


「た、ただいま…」


「ちょうど夜ご飯が出来たところだ。早く荷物を置いてきなさい」


「うん…」





なんで……何も言わないんだろう。




島崎とはもう会うな。
紀恵には悪影響だ。



なんて言っていたお父さんが、颯太さんと一緒に過ごしていたという事実がバレているというのに、今じゃ笑顔で話しかけてくる。







チラリと颯太さんに視線をあてると



彼はその視線に気がついて





「大丈夫。」





私にだけ聞こえる声で


ニコリと微笑んでくれた。

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