執事的な同居人
「紀恵。」
家の中に入る前、
外にいるお父さんに呼び止められる。
「楽しかったか?」
まさかの質問に驚きつつも
「うんっ…!」
笑顔を浮かべて
全力で頷いた。
楽しかったよ、本当に。
むちゃくちゃだった心が満たされてる。
そして、会える約束もできたんだもん。
また会えるんだと思うと嬉しくて嬉しくて…
「……そうか。」
私のその言葉に、
お父さんは安堵の微笑みを浮かべてた。
玄関のドアがパタリと閉まる前
また瞳に颯太さんの姿を捕らえて
「颯太さん!またねっ!!」
満面の笑みで彼に手を振った。
ドアが閉まると「紀恵~?帰ったの~?」と奥からお母さんの声。
その言葉に返答するよりも、私はその場で崩れ落ちるようにして座り込む。
(ああ、もうっ…)
こんなに幸せでいのかな…
最後に見た颯太さんも
優しく微笑んでくれたその表情がとても素敵で
今までいろいろと我慢してきた分、
颯太さんへの想いが胸に込み上げてくる。
(好きっ…大好き。)
私、颯太さんを好きになって良かった。
颯太さんが私を好きになってくれて良かった。
また……私の元へ戻ってきてくれて良かった。