執事的な同居人





───────────颯太side





紀恵さんが家の中に入ると、


この場にいるのは俺と石沢さんだけで。





「ずっと待っていらしたのですか」


「お前のことだ、そろそろ戻ってくるだろうと思ってな」


「…よくお分かりで。」





石沢さんは塀にもたれ掛かり、腕を組む。


どうやら、
俺と少し話をしようとしているみたいだ。





奇遇


その言葉が脳内に浮かぶ。



俺も、石沢さんと話がしたいと思っていたから。






「ありがとうございました。」





石沢さんへ深々と頭を下げる。





「ちゃんと、話が出来ました」


「………………」





石沢さんはジッと俺を見つめるだけで
何も発しようとはしない。






……実はというと、今日紀恵さんを連れ出したのは、前もって石沢さんに許可をいただいたから。







それは数日前のこと────






風邪をひいていたあの日、

決意をしてから数日。





今度は俺から行動しなければ。




そう決めた俺は

まず石沢さんに話をと思い





「石沢さん。仕事終わり少しお時間いいですか」


「おう、いいぞ~」





俺の事を軽蔑していたようにも感じたが、久々に話しかけた石沢さんはいつも通りで。





「なんだ?話って」





俺が何を話したいか、

薄々気づいているはずなのに


石沢さんは知らないフリをして
俺にそう問いかけた。





居酒屋のカウンターで横並びに座り、





「……俺が今から言うことは、
自分勝手な事だと重々承知の上です」





隣にいる石沢さんへ視線を向ける。





「そう分かってはいますが…石沢さんにどうしても伝えておかなければいけないんです」


「…………………」





目は、合わない。



石沢さんはグラスをゆっくりと机に置いた。





その事実が話を始める合図のように






「彼女のことが好きです。
ずっと……忘れられないくらいに」








「……彼女は俺に様々なことを教えてくれました。

一緒に食べるご飯が美味しいということ。
「いってらっしゃい」「おかえり」「おやすみ」その一言を言い合えるのが幸せだということ。
何気ない毎日に花を咲かせてくれるところ。

その全部を、彼女が俺に。

愛情というものはこんなにあたたかいものなのだと、愛のない家庭で育った俺に気づかせてくれました。

…………だからといって高校生の彼女に手を出してしまったことは許されないこと。

彼女の心もたくさん傷つけてしまった。

近くにいるべきじゃない。

だからこそ、離れた距離がベストだと思っていましたが……」







「おい。」



話の途中で石沢さんに遮られる。





「お前は…」





何かを言われる。



覚悟を決めて、

真剣に石沢さんを見つめれば

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