執事的な同居人





チケットを見せて初めての場所へと足を踏み入れれば、その世界観に目を輝かせる。




「着ぐるみがたくさんいますね。今なら撮影出来そうですが…」




きっと私が1番に食いつくと思ったのか、颯太さんは笑顔で手を振るキャラクター達の元へ歩みを進める。





もちろん撮りたい。


だけど1番に撮りたいのはー…





「颯太さん!!!」


「はい?」




パシャッ



振り向いた彼を、写真に収めた。




携帯越しに映るのは彼の自然な表情。





「へへっ…颯太さんを1番に撮りたかったの」


「……………」


「あっ、ブレてる!!颯太さんもう1回───」





撮りなおそうとするも、


なぜか携帯を持つ手を掴まれてしまい。





「紀恵さん」





グッと肩を寄せられて





「こっちみて。」


「…………っ」





その近さにドキドキしながらも


私は掲げられた携帯の画面を見つめて


笑みを浮かべた。












胸がずっと高鳴っていたにも関わらず


撮れたそれを確認すると、その写真に映る私は本当に幸せそうな顔をしていた。





「綺麗に撮れてましたか?」


「!!」





覗き込むようにしてその画面を見る彼。





「う、うん」




「ああ、ほんとだ。


とても可愛らしく撮れてますね」





満足気に微笑む颯太さんだけど





「(カッコよすぎる…)」





自分の表情よりも
颯太さんから目が離せない…。







そんな時、見つめていた携帯の画面がフッと暗くなった。





「ですが、」





それは颯太さんが画面を暗くするボタンを押したからであって、





「紀恵さんは直接目にした方が可愛いですね。」


「っ!!!」


「その赤い顔も写真では見れないですし」


「う、うるっさい…!」





颯太さんがそんなこと言うからじゃん…!







好きな人に言われると無意識に赤くなっちゃうんだってばっ。

< 353 / 422 >

この作品をシェア

pagetop