執事的な同居人





クスクスと楽しそうに笑うものだから


見られているのがなんだか恥ずかしくて、颯太さんを置いてスタスタと歩き始める。





「あれ?着ぐるみと撮らなくていいんですか?」


「いい!!!」


「そうですか?

では……まずどこに行きましょう。
確か紀恵さんは絶叫系苦手ですよね」





パンフレットを開けて「ここから近いのは…」と、呟く颯太さんを盗み見る。


その手はさっきまで私と繋いでいた手。




いつの間にか離されていて、寂しくなった私の手のひら。


そしてここは遊園地であって、颯太さんはもう前からルールを破っているのだから……





「………紀恵さん?」





颯太さんの腕に、私の腕を絡ませる。



ギュッと引っ付いて

もう離れないように。





「……呼び捨て、してよ」


「してますよ」


「違う!さん付けじゃなくて…」







「じゃなくて?」




吐息が触れそうなを距離まで顔を近づけて、瞳をのぞきこまれる。




その顔はニヤリと意地悪な。




うっ…


この人……絶対気づいてるはずなのに、


私にそれを言わせようとする。






「っ……そ、うたさんは……
私の、か、彼氏っ…なんだから…。

だから、敬語は、おかしいよ…」





ほんと、意地悪な人だ。



顔をすぐ赤くさせる私に言わせるんだもん。





ほら、颯太さんはその顔を見て







「───ああ、ほんと。可愛すぎて困る」




また楽しげに笑うんだから。






持っていたパンフレットを閉じると





「紀恵」




私の願いと共に





「どこ行きたい?」





優しく微笑みながら目を合わせてくれる。



その笑みのせいで、くらりとなった。




颯太さんだって、写真で見るよりも、直接目にした方が圧倒的にカッコ良さが増してるんだから。





「まずはカチューシャ買いに行きたい!!」


「てことはショップね。確かこっち」


「場所分かるの?」


「さっきマップ見たから。全部頭に入ってる」


「(たったあの一瞬で?)」





やっぱりこの人って完璧だ。

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