執事的な同居人





だが、その反面。

悲しいことも怖い思いもたくさん経験した。


幸せがずっと続かないということも、すれ違いってこういうことを言うんだと初めて知った。




そして何度も…

年の差という事実に苦しめられた。




もう少し、彼と年齢が近ければ。




願っても叶わないことばかりを考え、
早く大人になりたいと願った。




その願いだけは時間に任せることしか出来なくて…






そして訪れた1年半という期間。



長いようで短くも感じたその時間。






時間は止まらず動いているんだと



そんな当たり前のようなことを







「──────あっ!」







部屋中に鳴り響いた来客音が聞こえた今、その事実にすごく実感した。





使っていたコテを置き、向かう場所はもちろん玄関。



途中置き時計に視線をあてれば、針が示すものは聞いていた通りの時間で。





(ホント、完璧なんだからっ)





たったそれだけで笑顔が浮かぶ。










今日はとても幸せな1日になる日。






ゆっくりとドアを開けると


瞳に映るのは


想像していた通りの服装で


また少し大人びた人。





そして変わらず優しい笑みを浮かべる彼に





「颯太さんっ!」



満面の笑み浮かべて迎える。







「紀恵。」



愛おしい人に抱きしめられると幸福感がこれでもかというほどに溢れていっそ苦しいくらい。


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