執事的な同居人
「これからは離れて暮らす。」
中学生の頃、唐突に知らされたその事実。
妹の麗華はその意味を理解出来ずにキョトン顔を浮かべていたが、俺にとっては好機そのものだった。
離婚の原因は母さんの不倫。
俺はその事実に気づいていながらも、知らないフリをしてきた。実の親でありながらも無関心っと言ったところ。
その事が今になって父さんにバレてしまったらしい。
「和優。」
名前を呼ばれるも、
俺は父さんを鋭い目つきで睨んだ。
「こっちにこい」
差し伸ばされた手を弾き返し、
「アンタのとこになんて行くかよ」
この時に初めて、父さんに反抗した。
その時の父さんの冷やかな目。
冷たい表情。
……今でも忘れられなくて、腹が立つ。
お前の顔なんてこの先一生見たくないというのに。
母さんが不倫の道を選んだのだって、父さんが仕事ばかりしているからだろ。悪いのは全部お前だ。
この家庭がめちゃくちゃになったのも、全部全部お前のせいだ。
「お兄ちゃん……止めないの?」
「止めない」
「みんな離れ離れになっちゃうんだよ…?」
「いいんじゃない?別に。」
憎いアンタと縁が切れるなら、例え家族がバラバラになろうともそれで良かった。