執事的な同居人
完璧な人なんてこの世にいない。
そう思いながら生きてきた日々。
けれど、そんな人は存在するらしい。
颯太さんを見ているとつくづくそう思う。
頼まれたことはなんでもこなすし、出来ないことなんてないんじゃないかって。
完璧だからこそ周りからの信頼も凄かった。
何かあれば颯太さんに頼るし、けれどそれが何であろうと颯太さんは完璧にやり遂げる。
颯太さんを信頼している中の一人、俺も颯太さんを信頼していた。信頼……というか尊敬の方が近いかもしれないな。
そんな颯太さんだったが、ある人によって掻き乱されている時があった。
その人とはいろいろあって俺も知り合いになるのだけど、はじめ妹だと紹介されていたが実は同じ家に住む同居人みたいで。
その事実を知ったのはつい最近。
その日はちょうど麗華から『お父さんが倒れた』と連絡があった日だった。
けれど俺はもう父さんとは縁を切っているのだから関係のない話で、河川敷で彼女と再会するまではどうでもいいと思っていた。
……そう。再会する前までは────
「わ、たし……もうどうしたらいいのか分からなくて……っ、これ以上苦しませたくないのに……でも颯太さんのそばに居たいんです。……離れたくない。」
初めて会った日も、彼女は颯太さんの事ばかりを考えて行動していた。
依存しすぎなんじゃないか?そう思ってしまうほどに、その人のことばかりを。
俺はこの子のように特定の何かに執着したことが無い。
執着された側からすれば、無理矢理押し付けられることが鬱陶しくて仕方がないことを知っているから。
………けど、なんでだろう。
「キミがしたいようにすればいいんだよ。」
彼女の背中を押してしまうのは。
止めに入るべきだ。
なのに俺はそれとは真逆の事を言う。
「麗華のあの件も、キミが行動したからこそ颯太さんを助けられたんだ。キミはちゃんと正しい道を選んでる。」
「っ………」
「だから、自分がやるべき事に自信を持っていいんだよ」
それは彼女に言っているようで自分自身にも言っている気がした。
自分がやるべき事?
……そんなの、ねーよ。
俺はずっと正しい道を選んできた。
あの日父さんを選ばずに母さんを選んだことだって、正しかった───
……のか?