執事的な同居人
「石沢サン」
「ひゃっ!?」
耳に通るカイの声にまた1度肩が跳ねた。
「さすがにこれは怒られるんじゃない?」
「え?なにが……」
「こーれ。」
ちょいちょい、と指差す先は
「ッッ!!?」
カイの腕に自身の腕を絡ませてベッタリと引っ付いてる私の姿。
「ぎゃあ!!」
「ぎゃあって」
反射的に両手を上げて距離をとる。
「叫びたいのは俺の方だってんのに。好きな子にこんなことされてさ~ ……って、ちょっとちょっと。離れすぎ」
二度とあんなことをしないように2メートルほど距離をとると、カイは呆れたように頭を掻く。
「まあいいけど。なに?なんか話?」
「(言わせる気か)」
人気の少ないこの場所に連れてきたのは私だけど、話を切り出してきたのはそっちでしょうよ…
けどまあ聞きたいのは山々であって。
「カ…ズさん……知ってるの?」
「ああ、あの人カズって名前なんだ?」
「初耳~」と呟くカイに疑問ばかりが頭に浮かぶ。
名前知らないくせに……なんでホストクラブで働いてることは知ってるの?
知り合いって感じではなさそうだし、
親しそうな感じでもなさそうだし…
「てゆーか本当に通ってたんだ?
石沢サンって意外と男に囲まれたいタイプ?」
「通ってない!!!」
ついでに言うと囲まれたくもない!!
「親しい感じでてたのに?あの日初めて会ったような感じではなかったけど」
「あんた一体どこから見てたの…」
「もちろん河川敷。あの日バイトが休みでさ~ 暇だからサッカー部に加わって遊びで練習に参加してたんだよ。サッカー部って河川敷でよく練習してんじゃん?
だから石沢サンとそのカズさん?って人が横に並んで座ってるところちょうど見かけたってわけ。」
確かに……サッカー部は基本河川敷で練習するってマネージャーをしてる友達が言ってたっけ。
颯太さんの事で頭がいっぱいいっぱいだった私は、そんなことを気にも止めずにカズさんに颯太さんの事を相談していたという事実。
ほんと外っていつ誰に見られているのか分からないな…
颯太さんが警戒していたのはこういった理由も少なからずある気がする。
いつ誰に見られているか分からないから
" 外での接触は禁止 "
そのルールが作られたんだ。